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戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)戦闘妖精・雪風<改>/神林 長平 ハヤカワ文庫

いわずもがな知られたSF小説。
一度読んでみたいと思い購入しました。

とりあえず「スゴイ」の一言。
パソコンやネットがまだ今みたいな形にさえなっていなかった時代に書かれたとは到底思えません。
やっぱり上手いSF小説って素晴らしい。

なんだかんだ言っても登場人物はみんな人間臭い。
だからジャムとの戦いは彼らにとって、常に人間という存在に対する問題提起となっている。

人間はどこまで機械と一体化できるのか?
そんなテーマが隠されているようです。
雪風をはじめとする戦闘機の描写は目の前にそれがあるかのように描かれ、カッコいい。
ストイックな零と人間臭いブッカーはまるで戦闘機とパイロットのような感じもしなくはなかった。もっとも彼らの間には硬い友情がありましたが。。第一作目ではまだ零は人らしくありませんので。
とにかくスゴイ。すごいぞ、雪風。

あんまり内容とか感想とか書けてないけど、それはどっぷりこの世界に嵌ってしまったからです(笑)
これを読んだからには続編も。
ということでグッドラック読みました。

零が人間らしさを回復しつつ大きく成長します。
自分という個人は他者の存在無しには成り立たない。
私もよく忘れそうになる基本的なことなんですが、そんな当たり前で難しい事実を初めて自覚、今度は自分の内面に興味を傾けていきます。
第一作では短編集のようでしたが、こっちは話がつながっていて軍内組織が破綻していく様子がたたみ掛けるに描かれています。微妙なところで話が終わってしまいますがそれはそれでいいと思います。

……実はアニメも見た。
作画と音楽は神だが、ストーリーは原作を尊重するなら駄目。
話の前後は入れ替わってるし、違う話と混ぜられていたりと別物として見ないと正直私にはキツかった。
てかあの二人……、ちょっとヤバい雰囲気だぜ。。


なんでもっと早くにこんな作品に出会ってなかったんだろう。。
出会いに感謝しつつ。

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朗読者 (新潮文庫)「朗読者」/ベルンハルト・シュリンク 新潮文庫

ほのぼのした恋愛ストーリかと思いきや、実は重いテーマを描いた作品。
こういうやわらかい文体も好きです。

ドイツに生まれた少年ミヒャエルは、15の時にふた回り以上も年上の女性ハンナと情熱的な恋に落ちる。ミヒャエルは学生として、ハンナは車掌として暮らしながら二人の時間を暖め合っていった。
しかしある日、ハンナは目の前から姿を消す。
再び出会うのは、心の欠片を失ったままだった法学部の学生の時。
喜びもつかの間、ハンナは裁かれるべき罪人としてミヒャエルの前に現れたのだった...

ちょっとばかし暗いストーリーです。
序盤では分かりませんが、戦後のナチスをどう裁くかという事が主題となってます。
でも、そんなにどろどろはしてない。
一人前の女性と少年の恋という部分も背徳的だけどいやらしさは全くなかった。

文庫本の作品紹介の「なにか朗読してよ、坊や!」に惹かれて買ったんだが、最後にあんなに朗読できることが大切かっていうことを思い知らされた。
どんな国でも、人でも、大切な人が罪人だった、って悲しいという一言では現せないと思うな。
それにミヒャエルは裁く側の卵だった訳で……、おまけに私と同じ戦後育ちで……。
忘れられていく事実を風化させず、かつ何が正しくて何が悪いのかを決めなければならない。作品の至るところで写真で見ても現場跡へ行っても当時の感情は分からないってことが書かれてます。
………本当にそうだと思うよ。


独裁政府なんかもだけど、戦争ってものは決してどんな志さえも実現させることはない、と感じた。

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バルタザールの遍歴 (文春文庫)
「バルタザールの遍歴」/佐藤 亜紀 文藝春秋

なぜか「雲雀」をブッ飛ばして、この作品。
デビュー作とは考えられないぐらいのハイレベルさ。

バルタザールとメルヒオールの双子が同居するのは一つの身体。
誰が見ても一人の人間、だが、会話を交わすとき彼らは「僕ら」と自称する。
上流階級出身の彼らだったが、とある出来事をきっかけに人生の階段を踏み外し、終焉へと転落をはじめる。

二人の堕落っぷりがスゴい。

メルヒオールの書いたバルタザールとの回想録、というスタイルなのですが、双子という設定が上手く利いています。
…と言うか、この設定がないと作品の醍醐味が分からないでしょうな。

あくまでもメルヒオール視点。
だからバルタザールが本当に考えていたこととは違っていたりするし、彼らが最後までお互いに知らなかった事実、なんてものもある。
所々に入る回想録を書いている些細な描写でさえも、二人のキャラクターがきっちり立っていて、会話文なんかは言うまでもない。

要するに放蕩息子の典型ってヤツだ。

粗野で退廃的な享楽を好んだせいで堕ちる所までぐんぐん堕ちてく人生、なのに洒落っ気ってものが付きまとってんだ。
私的には、砂漠のホテルでスパイごっこってやつが傑作。

馬鹿げたことに真剣に取り組むところが彼らの無垢な性格を表しているようでもありました。
これが欠点で破滅するんだろうけど。


人生の愉快な転落ってやつがここにはある。


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天使
「天使」/佐藤 亜紀 文芸春秋

フラリと立ち寄った本屋で「ここで逃したら二度とこの本は探せない」なんて言う天啓が聞こえた気がして手に取った本。

実は作者の名前を知らなかったので、大した期待もせず、ハズレでもいいや、と適当な気分で読み始めたのですが、これが存外おもしろくて毎日、深夜までずっと読んでしまいました。

第一次世界大戦前、とりわけサラエボでの皇太子暗殺事件を下敷きにした、「感覚」という超能力を持つ異能者たちのスパイアクションといったところでしょうか。
もちろんハリウッド映画みたいなドンパチではなく、多くは心理的な駆け引きで進んでいきます。

主人公、ジェルジュが孤児同然に暮らしていたところを、実はオーストリアの諜報機関の幹部である顧問官に拾われるところから話は始まり、教育を受けてメキメキと狂気ともいえる天性の感覚を磨いていく。時が過ぎ、青年となったジェルジュは諜報員としてロマンスも多いながら、顧問官に忠実に仕事もこなせるように成長する。
やがて彼は自らの生い立ちとも深く関わるある重大な仕事を負うことになって……。

概要をさらうとこんな感じ。

まぁ私はジェルジュよりもケーラーが好きですけど(笑)
腕は抜群なのにどこか抜けてる具合がいい。
そういえばこの本の姉妹版みたいなのに「雲雀」ってのもあるそうですね。

こういう舞台設定の作品を探すのは難しいです。
私のツボでもあるんだけど、この手の作品は下手をしたら、かなり陳腐なストーリーってのもあるので注意しないといけないね。
しかし、この本は別です。
古典的なスタイルをとりながらも、おもしろさは薄れてません。
見方を変えればある意味でライトノベル的な要素も少なからず持っているように私には思えました。
その代わり、文体は硬い、読者が読んで理解できるギリギリのところまでウエイトが絞られているので、こういう時代やヨーロッパとは肌が合わない方、堅苦しい文が嫌いな方にはあんまりオススメできません。


この本は買って正解でした。

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見知らぬ妻へ「見知らぬ妻へ」/浅田 次郎 光文社

試験中でレビューを放置していた短編集。

浅田次郎の短編集を読んだのはこれが初めてです。
どれもこれも、戦後から現代への奔流に押し流されて、忘れてしまったものをもう一度取り戻そうとする話でした。

私はもちろん戦後生まれであって、ましてや戦争なんてリアルに体験したことがない。
だから作品が言おうとする大切なこと、例えば家族やご近所との関係、貧しくとも揺るぎない将来への志とかそういうものは分かった気になってるだけかもしれません。
だが、一つ言えるのは、どんな時代でもその時代に生きている人間は自分の時代を憂う、ということ。
よく年配の方は「昔は良かった」とか言いますよね。
でもあれって、間違ってる。
現代に生きてる人間にとっては「そんなこと言われても仕方がない」って思うしかありません。
それなら一緒にどうしたら良いか考えてくれ。
確かに、若者って言われる世代の私にも無責任さとかあるだろうけど。
口先だけじゃ、何も時代は変わらないだろ、きっと。


なんかレビューっぽくないなぁ……。
とにかくこの作品は、作品中の時代を生きた世代には懐かしさ、何も知らない世代には失ったものが何であるか考えさせると思う。


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