「椿山課長の七日間」/浅田 次郎 朝日新聞社小説のレビュー書くのって久しぶりだな。
さすが浅田次郎。今回も笑いましたね!
タイトル通り、椿山課長の7日間を描いた本。と言ってもそれだと何の芸もない。
本当は「椿山課長が死んでから下界に降りてきた7日間を描いた本」です(笑)
椿山は絵に描いたようなデパートマン。夏のセール期間中に過労死し、あの世へ。
しかし、思い描いていた様な
「黄泉の国」ではなかったのだ!!!
なんと天国と地獄がバッサリと分かれている訳でもなく、死者を振り分ける中陰、スピリッツ・アライバル・センター、通称SACと言うごく事務的な役所だった!
係員の指示に従って手続きをすると講習を受ける羽目に。その講習はみの覚えのない「邪淫の罪」、椿山は異議申し立てをする事に。自らの言い分はなんとか通り、仮の肉体を借りて下界に7日間だけ降りる事を許される。
その時同じく降りたヤクザの心優しい組長、聡明な少年とも色んな縁で椿山の三日間は辛くも優しい輪で繋がっていく。
ホントに面白かったですよ。黄泉の国が浅田テイストで面白く、リアルな役所みたいなところで名前は全員戒名で呼ばれます(笑)
天国と地獄へはエスカレーターで直通。
椿山の様な下界に降りたいと言う者はSACでは疎ましく思われる。なんと「往生際が悪い」そうで。まさに、だね。
椿山には妻子と家の30年ローン、デパートのバーゲンの売り上げ達成の不安などやり残した事が沢山。
最も気がかりなのは男手一つで育ててくれた痴呆の父(実は痴呆は嘘ですよ)……。
この本は家族愛がテーマ。家族愛といってもそれは家族とは限らない、親分と子分だったり養父母と養子だったり。
浅田氏の通称お笑い路線は笑わせるところは思い切り笑わせ、涙を誘うところは心に何かを訴えかける。そう、ストーリーの緩急がとても巧い。
決してパロディではなくてあくまでもエンタティメントとしてのフィクション。
しかしお笑い路線の場合はたいがい「こうだったら面白いのになぁ」って言う願望がそのまま今後の展開になる。つまり「ありえない」のですよ(笑)フィクションだから出来るストーリー。まぁ読者の期待を裏切らないって事です。笑いのツボを良くおさえているようで。
優しいだけがとりえの椿山、自らの人生はすべて子分のためという武田、本当の親を知りたい一心の雄一。
複雑というのか奇怪というのか恐ろしくメチャメチャでかつコンパクトに3人の運命は絡み合う。
感動するシーンはもちろんあります。
もともとテーマが結構重たいのにサラっと書き上げるのが浅田氏の真骨頂。すごいなぁ、こんな作風の人はまずいないだろうに。
あとお笑い路線ってやつですが作品をいくつか下に書いときます。