「コッペリア」/加納 朋子 講談社たまには文学作品から離れて現代作家の本を読んでみるのもいい。
この本はストーリーの下敷きに古典作品が使われているので少しリンクしている感もあり、近頃の私の中の世界観を保ちつつサクサクと読めた。
コッペリアのストーリーは一言に尽きると思う。
そう、倒錯。
主人公の1人、了はピグマリオニズムに則るかのようにある人形に恋心を抱く。
了が愛して止まない人形に容姿がそっくりの女優、聖は了のような人間の抱く歪んだ愛を一方的に注がれ続ける。
登場人物の全てがミステリーではお馴染みの性格を、していない。
実に奇妙で簡単に言うと変人揃い。
まず、主人公の青年が人形を愛すると言う時点でちょっと普通ではない作品世界を持っている。
最後まで読み通して分かったことだが、コッペリアの空気は芝居の劇場に流れるものや、アンティーク品を見た時の感じと酷似している。
あの独特の浮世離れした微妙な緊張感とかそんなものが。
正直に言ってそれほど面白い本とは思わなかったが、1度本を閉じてもまた開けたくなるという状態にはなった。
読み終えた今でもこの作品が持つ異質な空気感が尾を引いている。
作中で描写されている演劇に身を投じる人たちのエキセントリックな様は事実だと思う(私は実際に会ったことがあるので体験済みですww)
だが巧妙に隠されたトリックが明かされるシーンは少々いただけない。
場面ごとに語り手が順繰りに変わっていく形式なので逆に混乱して誰が誰のことを指しているのかが理解しづらいと思った。
この手のトリックは好きなので読み進んでいくと次第に気にならなくなったけどね。
微妙に創作意欲を駆り立てられた。何でだろうな?(笑)
滅多にない作品世界に酔いしれることが出来る一作。