「天使」/佐藤 亜紀 文芸春秋フラリと立ち寄った本屋で「ここで逃したら二度とこの本は探せない」なんて言う天啓が聞こえた気がして手に取った本。
実は作者の名前を知らなかったので、大した期待もせず、ハズレでもいいや、と適当な気分で読み始めたのですが、これが存外おもしろくて毎日、深夜までずっと読んでしまいました。
第一次世界大戦前、とりわけサラエボでの皇太子暗殺事件を下敷きにした、「感覚」という超能力を持つ異能者たちのスパイアクションといったところでしょうか。
もちろんハリウッド映画みたいなドンパチではなく、多くは心理的な駆け引きで進んでいきます。
主人公、ジェルジュが孤児同然に暮らしていたところを、実はオーストリアの諜報機関の幹部である顧問官に拾われるところから話は始まり、教育を受けてメキメキと狂気ともいえる天性の感覚を磨いていく。時が過ぎ、青年となったジェルジュは諜報員としてロマンスも多いながら、顧問官に忠実に仕事もこなせるように成長する。
やがて彼は自らの生い立ちとも深く関わるある重大な仕事を負うことになって……。
概要をさらうとこんな感じ。
まぁ私はジェルジュよりもケーラーが好きですけど(笑)
腕は抜群なのにどこか抜けてる具合がいい。
そういえばこの本の姉妹版みたいなのに「雲雀」ってのもあるそうですね。
こういう舞台設定の作品を探すのは難しいです。
私のツボでもあるんだけど、この手の作品は下手をしたら、かなり陳腐なストーリーってのもあるので注意しないといけないね。
しかし、この本は別です。
古典的なスタイルをとりながらも、おもしろさは薄れてません。
見方を変えればある意味でライトノベル的な要素も少なからず持っているように私には思えました。
その代わり、文体は硬い、読者が読んで理解できるギリギリのところまでウエイトが絞られているので、こういう時代やヨーロッパとは肌が合わない方、堅苦しい文が嫌いな方にはあんまりオススメできません。
この本は買って正解でした。