「バルタザールの遍歴」/佐藤 亜紀 文藝春秋なぜか「雲雀」をブッ飛ばして、この作品。
デビュー作とは考えられないぐらいのハイレベルさ。
バルタザールとメルヒオールの双子が同居するのは一つの身体。
誰が見ても一人の人間、だが、会話を交わすとき彼らは「僕ら」と自称する。
上流階級出身の彼らだったが、とある出来事をきっかけに人生の階段を踏み外し、終焉へと転落をはじめる。
二人の堕落っぷりがスゴい。
メルヒオールの書いたバルタザールとの回想録、というスタイルなのですが、双子という設定が上手く利いています。
…と言うか、この設定がないと作品の醍醐味が分からないでしょうな。
あくまでもメルヒオール視点。
だからバルタザールが本当に考えていたこととは違っていたりするし、彼らが最後までお互いに知らなかった事実、なんてものもある。
所々に入る回想録を書いている些細な描写でさえも、二人のキャラクターがきっちり立っていて、会話文なんかは言うまでもない。
要するに放蕩息子の典型ってヤツだ。
粗野で退廃的な享楽を好んだせいで堕ちる所までぐんぐん堕ちてく人生、なのに洒落っ気ってものが付きまとってんだ。
私的には、砂漠のホテルでスパイごっこってやつが傑作。
馬鹿げたことに真剣に取り組むところが彼らの無垢な性格を表しているようでもありました。
これが欠点で破滅するんだろうけど。
人生の愉快な転落ってやつがここにはある。